感染性物質の分類基準・・・2005年1月1日より全面改定された
(国立感染症研究所翻訳・監修版 WHO/CDS/CRS/LYO/2005.22より抜粋・引用)
感染性物質
輸送でいう「感染性物質」とは、病原体を含むことが分かっているか、またはそれが合理的に予測できる物質と定義される。病原体とは、ヒトあるいは動物に疾病を引き起こすことができる微生物(細菌、ウィルス、リケッチア、寄生虫、真菌を含む)およびその他の物質(たとえばプリオン)と定義される。この定義は、明らかに除外されているものを除く、あらゆる検体に適用される。感染性物質は次の2つのカテゴリーに分類される。
カテゴリーA
その物質への曝露によって、健康なヒトまたは動物に恒久的な障害や、生命を脅かす様な、あるいは致死的な疾病を、引き起こす可能性のある状態で輸送される感染性物質をいう。 下記の一覧表に示されていなくても、同じ基準に合致するもの、新たに出現した病原体で同じ基準に該当するものは、カテゴリーAに分類しなければならない。 また、この基準に該当するかどうかがはっきりしない感染性物質も、カテゴリーAに含むこととする。
<特に指定がない限り、臨床検体、病原体株、培養、廃棄物内含有などあらゆる状態のものが、カテゴリーAの感染性物質に含まれる微生物の例示>
UN番号と正式輸送品目名 | 微生物 |
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UN2814感染性物質
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Bacillus anthracis(培養・増殖したものに限る) |
Brucella abortus(培養・増殖したものに限る) | |
Brucella melitensis (培養・増殖したものに限る) | |
Brucella suis (培養・増殖したものに限る) | |
Burkholderia mallei – Pseudomonas mallei-glanders (培養・増殖したものに限る) |
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Burkholderia pseudomallei – Pseudomonas pseudomallei (培養・増殖したものに限る) |
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Chlamydia psittaci ? avian strains(培養・増殖したものに限る) | |
Clostridium botulinum(培養・増殖したものに限る) | |
Coccidioides immitis(培養・増殖したものに限る) | |
Coxiella burnetii(培養・増殖したものに限る) | |
Crimean-Congo haemorrhagic fever virus | |
Dengue virus (培養・増殖したものに限る) | |
Eastern equine encephalitis virus(培養・増殖したものに限る) | |
Escherichia coli, verotoxigenic(培養・増殖したものに限る) | |
Ebola virus | |
Flexal virus | |
Francisella tularensis(培養・増殖したものに限る) | |
Guanarito virus | |
Hantaan virus | |
Hantaviruses causing haemorrhagic fever with renal syndrome | |
Hendra virus | |
Hepatitis B virus (培養・増殖したものに限る) | |
Herpes B virus (培養・増殖したものに限る) | |
Human immunodeficiency virus(培養・増殖したものに限る) | |
Highly pathogenic avian influenza virus(培養・増殖したものに限る) | |
Japan Encephalitis virus(培養・増殖したものに限る) | |
Junin virus | |
Kyasanur Forest disease virus | |
Lassa virus | |
Machupo virus | |
Marburg virus | |
Monkeypox virus | |
Mycobacterium tuberculosis(培養・増殖したものに限る) | |
Nipah virus | |
Omsk haemorrhagic fever virus | |
Poliovirus(培養・増殖したものに限る) | |
Rabies virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Rickettsia prowazekii(培養・増殖したものに限る) | |
Rickettsia rickettsii(培養・増殖したものに限る) | |
Rift Valley fever virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Russian spring-summer encephalitis virus(培養・増殖したものに限る) | |
Sabia virus | |
Shigella dysenteriae type 1(培養・増殖したものに限る) | |
Tick-borne encephalitis virus(培養・増殖したものに限る) | |
Variola virus | |
Venezuelan equine encephalitis virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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West Nile virus(培養・増殖したものに限る) | |
Yellow fever virus(培養・増殖したものに限る) | |
Yersinia pestis(培養・増殖したものに限る) | |
UN2900動物感染性物質
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African horse sickness virus (註:航空輸送では2005年から削除) |
African swine fever virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Avian paramyxovirus Type 1- (註:航空輸送では2005年から「強毒(型)」が加えられた) Newcastle disease virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Bluetongue virus (註:航空輸送では2005年から削除) |
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Classical swine fever virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Foot and mouth disease virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Lumpy skin disease virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Mycoplasma mycoides ? contagious bovine pleuropneumonia (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Peste des petits ruminants virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Rinderpest virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Sheep-pox virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Goatpox virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Swine vesicular disease virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
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Vesicular stomatitis virus (註:航空輸送では2005年から「培養・増殖したものに限る」の要件が追加) |
カテゴリーB
カテゴリーAの基準に合致しない病原体で、具体的なリストはない。
適用除外
以下の生物由来の物質は(健康への)危害が低いため、危険物に関する要件と規則の適用対象から除外する:
- 感染性物質を含まない物質、またはヒトや動物の疾病原因とならない物質
- ヒトや動物に対して非病原性の微生物を含む物質
- 中に含まれる病原体が中和または不活性化され、健康へのリスクを喪失した状態の物質
- 大きな感染リスクがあるとは考えられない環境検体(食品や水の試料含む)
- 輸血および/または移植を目的として、採取および輸送される血液および/または血液成分
- 乾燥ろ紙血液(検査のためにろ紙などへ滴下し、乾燥させた血液)及び便潜血検査の試料・除染済みの医療廃棄物または臨床廃棄物