臨床的に重要な菌種は、Actinomyces属だと思います。
口腔のActinomyces属発育条件は、種によって通性嫌気性から嫌気性まで様々で、二酸化炭素の存在下の方が良く発育するものもあります。アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)、オドントリティカス(A. odontolyticus)、オリス(A. oris)などは、歯ブラシをしてきれいになった歯の表面に最初に定着する、いわゆる初期付着細菌として注目されています。歯垢中でアクチノマイセスが増えると、すべてではありませんが、歯と歯ぐきの境目や、奥歯の噛み合わせの面に虫歯(う蝕)を作ったり、歯肉炎という歯ぐきの炎症の原因になります。アクチノマイセス・イスラエリィ(A. israelli)は酸素があると発育できない嫌気性細菌で、時に顎放線菌症という重篤な感染症を引き起します。
Actinomyces属を嫌気性菌用血液培地で嫌気性培養したActinomyces属の集落は,3日くらいで赤色または黒色に着色するもの (A. odontolyticus), 臼歯状の集落を作るもの (A. naeslunndii,A. israelii)、そして正円の不透明の集落(A. myeri)など、いくつかの集落型があります。またBHI寒天培地、GAM寒天培地など血液寒天として使用しない透明~半透明の寒天培地で純培養して、まだ集落が肉眼でははっきり見えない時期 (一夜培養で)に培地表面を低倍率の顕微鏡で拡大して見ると通常の細菌は大きく成長した時と同じく正円に見えるのですが、あるActinomyces属は糸状菌のようにクモ(spider)状に見えてくるものがあります。これはA. naeslunndii,A. israeliiに特徴的な所見として有名です。
文責:霜島正浩